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コラム

ここでは、思いついたことなどを気が向いたときに書き込んでいきます。落書きみたいなもので、役に立つことはほとんどないと思いますので、時間があるときに緩く眺めてください。

「被告」と「被告人」                     平成26年5月21日

 「被告」と「被告人」、法律の上で、これらがどのように違うのかということは多くの方がご存じだと思いますが、簡単に言えば、「被告」とは、民事裁判を起こされた人のことを指すのに対し、「被告人」とは、犯罪を犯したとして刑事裁判にかけられた人を指しています。
 ところが、新聞やテレビなどを見ていると「被告」という言葉が、法律とは異なって、刑事裁判にかけられた人を示すものとして使われています。例えば「〇〇被告は、●月●日の公判で…と述べた。」などという記事はしょっちゅう目にすると思います。これに対して、民事裁判の被告については、報道ではそのまま「被告」という言葉を使っています。そのため「被告」と「被告人」という言葉に対する誤解が生じ、時々、妙な諍いを起こすことがあります。
 10年以上前のことになりますが、ある民事裁判のために法廷の傍聴席で順番を待っていたところ、どちらも代理人が付いていない当事者本人同士の民事裁判の手続が行われていました。すると、原告(民事裁判を起こした人)が、発言するために立ち上がって、向かい側の席に座っている被告に対し「被告人は…」と言い出しました。このように言われた被告は「人を犯罪者みたいに言うな。」と言って怒り出し、しばし言い争いになりました(最終的には裁判官がその場を収めました)。
 また、これもかなり前のことになりますが、民事裁判の訴状を持って相談に来た方が、「人のことを「被告」なんて犯罪者みたいに書いてひどくないですか。こういうことって許されるんですか。」と大変に腹を立てて話を始めたということもありました。
 これらは「被告」と「被告人」という言葉に対する誤解から生じたものであり、その原因が報道で使われている用語によるものと決めつけることはできませんが、少なからずその影響があるのではないかと感じています。
 ところで、法律上の用語と報道で使われる用語が異なっているものは他にもあります。
 例えば「容疑者」という用語がその一つです。報道では、誰かが警察に逮捕されると「〇〇容疑者が◎◎警察署に逮捕された。」などと報道しています。ところが、刑事手続を規定している刑事訴訟法という法律では「容疑者」という用語はありません。刑事訴訟法では、犯罪の疑いをかけられて捜査の対象とされている人(逮捕されている人だけではありません)で、刑事裁判にかけられていない人のことを「被疑者」と呼んでいます。
 では、なぜ、報道では「被疑者」を「容疑者」と言うようになったのでしょうか?この点は、私が新聞社に勤めている時代に上司にでも聞けば良かったのですが聞いていませんでしたので、確かなものであるかは分かりませんが、「被疑者」と「被害者」が似ていることから間違えないようにするためであるなどと言われているようです。
 また、被疑者が逮捕された後の報道で「10日間の拘置が認められた」などと書いてある新聞記事を目にすることがあると思いますが、ここで使っている「拘置」という用語も、刑事訴訟法で使われている用語とは異なっています。刑事訴訟法では、逮捕・送検された後に裁判所が認める身柄拘束のことを「勾留(こうりゅう)」と言っています。新聞で「拘置」という言葉を使っているのは「勾」という字が常用漢字にないためだということで、新聞で「勾留」という用語を使う必要がある場合には、「勾留(こうりゅう)」とか「勾(こう)留」、「こう留」というように読み仮名を付けるかひらがなを使って表記しています。
 無用な誤解を生じないようにするため、報道の用語も法律上の用語に合わせたらどうかという考えもあるのですが、正確性・厳密性を求める法律と、広く市民に伝えるため分かり易さを求める報道とでは、このように表記が異なるということも有りなのではないかと思います。
 むしろ、このように報道で目にする用語と、法律上の用語の違いというのを意識して、新聞やテレビを見ていると少しは面白いと思えることがあるのではないかと思います。
                                              おわり 

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